小児の急性中耳炎

2020年11月15日

寒い季節がやってきました。当院の壁紙もハロウインからクリスマスバージョンに変更しました。スタッフの手作りです。忙しい仕事の合間に作ってくれました。いつものことですが感謝です。

急性中耳炎はお子さんがよくかかる病気の一つです。「急性に発症した中耳の感染症で、耳痛、発熱、耳漏を伴うことがあると定義されています。ただし乳幼児などのお子さんは痛みを表現できず、不機嫌や耳をよくさわるようなしぐさなどが急性中耳炎のサインになることがあります。

急性中耳炎は、1)生まれてから3歳までに50~70%の小児がかかる、2)ほとんどの小児が生まれてから2歳までに少なくとも1回は急性中耳炎にかかる、3)生後3歳までに30~40%の小児が3回以上の急性中耳炎にかかるなどの報告があります。

多くのお子さんが一度はかかる急性中耳炎ではありますが、一部のお子さんは何度も急性中耳炎にかかり、頻回の通院が必要になる場合があります。反復性中耳炎と呼ばれ「過去6か月以内に3回以上、12か月以内に4回以上急性中耳炎に罹患する」と定義されています。また急性中耳炎の治療をおこなっても治療に抵抗する難治性中耳炎もあります。

中耳炎の反復や難治化にはいくつかの要因が考えられています。

・患者の免疫力:中耳炎の反復や難治化する患者は2歳未満が圧倒的に多いとの報告があります。生後6か月から2歳までは母体から移行された免疫が減少する一方で、お子さん自身の免疫が発育途上のため免疫による防御能力が不十分なことが原因として考えられます。急性中耳炎の原因菌の一つに肺炎球菌があります。肺炎球菌ワクチンの予防接種は大切になります。

・環境要因:集団保育はウイルス性感冒がおこりやすい環境であります。細菌性の急性中耳炎は感冒を契機に発症することが知られています。マスク等による飛沫感染防止、頻繁な手指消毒などが大切になります。

・医療要因:抗菌薬が必要かどうか、どの抗菌薬を使用するかなど適切な治療法の選択が大切になります。その選択が適切でない場合は急性中耳炎の反復や難治化につながる可能性があります。

中耳炎の反復や難治化は、免疫・環境・医療などの複数の要因が重なり合っているため一つの要因の改善だけでは中耳炎が治らない場合もあります。治療が長期間になる場合も多いため家族への十分な説明とともに適切な治療が必要になってきます。