2021年11月

ワクチンと急性中耳炎

2021年11月14日

急性中耳炎の主な起炎菌は肺炎球菌とインフルエンザ菌(インフルエンザウイルスではありません)です。

乳幼児の上咽頭に肺炎球菌やインフルエンザ菌がコロニー形成することが知られています。それだけで感染症が発症するわけではなく、ウイルス性上気道炎を契機に急性中耳炎などが発症します。

集団保育の環境では頻繁にウイルス性上気道炎の流行がみられます。そのためウイルス感染症に続発する上気道細菌(肺炎球菌やインフルエンザ菌など)感染症が多発してきます。

乳幼児の上気道感染症の多くがウイルスが原因であるためその時点では抗菌薬の治療効果は認めません。ただしウイルス感染症に続発して発症した細菌性の急性中耳炎などでは抗菌薬治療が必要になります。重症度に応じた適切な抗菌薬の使用が求められます。

急性中耳炎の主な起炎菌は最初にも書いた肺炎球菌とインフルエンザ菌です。肺炎球菌ワクチンは急性中耳炎の予防効果が認められています。肺炎球菌ワクチンを接種された小児は、対象群と比較して急性中耳炎エピソードが6%、肺炎球菌による中耳炎エピソードが34%、ワクチン血清型によるエピソードが57%少なくなったとの報告があります。

b型インフルエンザ菌(Hib)ワクチンの中耳炎予防効果はないと言われています。(Hibにより小児侵襲性インフルエンザ菌感染症は激減しています)

急性中耳炎が先行するウイルス感染症(インフルエンザウイルスも含まれます)に続発して発症することから、インフルエンザウイルス・ワクチンは急性中耳炎発症予防が期待されます。インフルエンザウイルス・ワクチンは、インフルエンザ流行期の急性中耳炎発症を30~55%減少させたとの報告もあります。

ワクチンは、耳鼻咽喉科領域の代表的な疾患である急性中耳炎の発症予防として様々な有効性を認めています。

新型コロナウイルス感染症に対するワクチンの効果は皆さんが経験されたと思います。改めてワクチンの重要性を考えてみてはいかがでしょうか。