認知症と耳鼻咽喉科

2020年8月16日

高齢化が進んでいる現在、認知症の増加は今後さらに大きな社会問題になってくるでしょう。2017年7月、国際アルツハイマー病協会国際会議において、認知症の約35%は潜在的に修正可能な9つの危険因子に起因すると発表されました。その危険因子は、難聴、低教育、高血圧、肥満、喫煙、うつ、運動不足、社会的孤立、糖尿病であり、最も寄与度が高いのは難聴であるとのことでした。

難聴の存在は、家族や近隣の方との会話やコミュニケーションの減少にもつながりまります。さらに社会的孤立やうつにも関与していきます。

補聴器の使用により認知機能が改善したとの報告もあれば、補聴器による介入が認知機能への改善については疫学研究では有意なデータはを見いだせなかったとの報告もあります。

補聴器が認知機能におよぼす影響に関しては不明なことも多いのが現状です。

難聴がある高齢者が会話に入れなかったり、聞こえていないのに理解している態度をとったり曖昧な返事をする姿をしばしばみかけます。聞こえないために家族から厳しい言葉を投げかけられ、心が傷ついている場合も決して珍しくありません。

認知症と難聴との関連が明らかなになってきた現在、聴力の正確な評価が今まで以上に必要になってきています。

難聴以外にもふらつきなどのバランス障害、嚥下障害、睡眠時無呼吸症候群なども認知症との関連が指摘されています。

耳鼻咽喉科医も高齢化社会における役割を考え医療を行っていく時期にきていると思われます。